【QAコラム】「なんちゃって技人国」に政府がメス――2026年4月15日、何が変わるのか
執筆者
髙瀨 智抄子 (たかせ ちさこ)
行政書士(申請取次)/宅地建物取引士/登録日本語教員
広島市出身。ニューヨークに4年間在住し、民泊・シェアハウス事業などで起業した経験を持つ。世界40カ国を訪問。帰国後、不動産会社での賃貸・売買業務を経て、国際法務行政書士BPROOMを開業。外国人の在留資格申請(技人国・特定技能・永住・帰化等)を専門とし、登録日本語教員として外国人材を受け入れる企業の教育サポートも行う。日本語・英語・スペイン語に対応。
「発表から施行まで1週間。業界に激震が走っています」——登録日本語教員でもある行政書士・髙瀨智抄子先生に、4月15日から始まる在留資格「技人国」の要件変更と、その本当の狙いを聞きました。
在留資格「技術・人文知識・国際業務」とは
在留資格「技術・人文知識・国際業務」とは、どのような資格ですか?
いわゆる「技人国(ぎじんこく)」と呼ばれる在留資格で、日本の企業等との契約に基づき、理工系の技術職、法律・経済等の人文系知識を活かした業務、あるいは外国文化に基盤を持つ感性を必要とする業務に従事する外国人のための資格です。具体的には、ITエンジニア、通訳・翻訳、デザイナー、マーケティング担当者、企業内の通訳などが該当します。在留期間は5年・3年・1年・3月のいずれかが付与されます。
2026年4月15日からの変更点
2026年4月15日から在留資格「技人国」は何が変わるのですか?
カテゴリー3または4に該当する企業等(中小企業や新設法人など)が申請する場合、新たに2つの書類が追加で必要になります。1つ目は「所属機関の代表者に関する申告書」です。2つ目は、言語能力を用いて対人業務(通訳、翻訳、接客など)に従事する場合に求められる「CEFR・B2相当の語学力を証する資料」です。日本語の場合、JLPT・N2以上やBJTビジネス日本語能力テスト400点以上などが必要になります。なお、日本の大学等を卒業している場合や、中長期在留者として20年以上日本に在留している場合などはB2相当とみなされます。
改正の背景――「なんちゃって技人国」の排除
なぜ今このタイミングで技人国の要件が変更されるのですか?
今回の改正の本質は、いわゆる「なんちゃって技人国」の排除です。本来、技人国はホワイトカラー業務のための在留資格ですが、実態として日本語がほとんど話せない方が入国し、オフィスではなく現場や工場で働いているケースが少なくありませんでした。たとえば、製造工場で「生産管理」の肩書でも実際は現場作業に入っている、飲食店で「エリアマネージャー」といいつつ接客や調理をしている、ホテルで「通訳」の名目でベッドメイキングをしている――こうしたケースに政府が本格的にメスを入れてきたと言えます。今年1月23日の段階でいずれこうなるとは言われていましたが、発表から施行まで1週間しかないのは業界に大きな衝撃を与えています。
「代表者申告書」が追加された理由
「所属機関の代表者に関する申告書」の追加には、どういう意図があるのですか?
この書類は、外国人が代表者を務める企業からの申請を意識したものと考えられます。外国人社長が経営する企業からの「なんちゃって技人国」の申請が多いと言われており、所属機関の代表者情報を明らかにすることで、申請段階でのチェックを厳格化する狙いがあるとみられます。なお、上場企業や独立行政法人などカテゴリー1・2に該当する大手企業は今回の追加書類の対象外です。
現在「技人国」で在留中の方への影響
現在「技人国」で在留している外国人にはどんな影響がありますか?
次回の在留期間更新時にN2相当の語学力が求められる可能性があります。JLPT・N2は中学1年生程度の日本語力が目安とされていますが、合格は決して容易ではなく、更新までに取得するのは現実的に厳しい方も多いでしょう。技人国を維持できない場合、特定技能1号への切り替えという選択肢もありますが、家族帯同ができなくなるため、家族のいる方には大きな決断を迫られます。特定技能2号を目指す場合は、部下の管理実績や難易度の高い試験が必要となり、こちらもハードルは高いのが実情です。今後の運用がどう定着していくか注視しながら、早めの対策を取ることをお勧めします。
髙瀨先生に相談を
今回の改正は単なる書類の追加ではなく、「技人国」本来の趣旨に立ち返り、ホワイトカラー業務にふさわしい人材かどうかを厳しく問う方向への転換です。外国人を雇用している企業の担当者の方も、在留資格を持って働いている外国人の方も、早急に現状を確認されることをお勧めします。在留資格申請に関するご不明な点は、在留資格を専門とする髙瀨先生にお気軽にご相談ください。
