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育成就労制度の外部監査人とは?要件・業務内容・監理支援機関の準備を行政書士が解説

外国人雇用

執筆者: 浦松 丈二

監修者: 浦松 丈二

この記事の結論

  • 2027年4月1日、技能実習制度が「育成就労制度」へと切り替わります。根拠は入管法等一部改正法(令和6年法律第60号)で、施行期日は2025年9月26日に閣議決定、9月30日に関係省令が公布されました(出入国在留管理庁)。
  • 外部監査人の設置が、監理支援機関の許可基準として新しく義務づけられます。要件は「養成講習の受講」「弁護士・社会保険労務士・行政書士の有資格者その他育成就労の知見を有する者」「監理支援を行う育成就労実施者と密接な関係を有さないこと」の3つです。

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飲食店や建設現場で働く外国人のビザ更新を手伝ってほしい。そんなご相談が、四葉行政書士事務所に少しずつ増えています。経営者の方は採用にも教育にも誠実で、悪意などどこにもありません。それでも書類を見ていくと、「これは更新できません」と申し上げなければならない案件に出会うことがあります。

なぜ、まじめにやっているはずの現場で、こういうことが起きるのでしょうか。そして2027年4月の制度改正は、この問題に何を用意したのでしょうか。私は行政書士として制度を、四葉行政書士事務所の代表として現場を、四葉不動産株式会社の経営者として受入れの実情を、三つの立場から見ています。その三つが交わるところに、「外部監査人」という地味だけれど大事な仕組みがあります。

外部監査人とは?
外部監査人とは、育成就労制度で監理支援機関の業務が適正に行われているかを、外部から独立して確認する人です。監理支援機関の許可基準の一つとして設置が求められ、養成講習を受けた弁護士・社会保険労務士・行政書士などが担うことが想定されています。

なぜ、まじめな現場でビザ更新が通らない案件が起きるのですか?

結論から申し上げますと、悪意ではなく「実態と在留資格のズレ」が、誰にも見られないまま積み重なるからです。

ご相談の入り口は、たいてい「更新手続きをお願いしたい」という一言です。ところが詳しくうかがうと、許可されている在留資格の活動範囲と、実際に任されている仕事の中身が合っていない。書類を整えれば通る、という話ではありません。制度上、その在留資格ではその仕事を続けられないのです。

問題は、ズレが生まれた瞬間に誰も気づかなかったことにあります。経営者も本人も、現場が回っているうちは「うまくいっている」と感じています。人手が足りない、目の前の仕事は待ってくれない。そうやって日々を回すうちに、いつの間にか制度の枠から外れていきます。そして更新の時期になって、はじめて表面化します。

「この人はどうなるのか」。そう問われたとき、私が手伝えるのは現状の整理と、進める道・進めない道の見極めまでです。すでに起きてしまったズレを、後からなかったことにはできません。途中で誰かが実態を見ていれば、まだ手の打ちようがあった——その「途中で見る人がいなかった」という一点が、今回の制度改正の核心につながっています。

① 人手不足が「とりあえず回す」を生む

現場は止められません。だからこそ、制度上の整合性は後回しにされがちです。

② ズレは静かに進む

違法をしようとした人はいません。日々の運用の中で、少しずつ枠から外れていきます。

③ 表面化は「更新時」まで遅れる

定期的に外から見る人がいないと、問題は最も対応しづらい時点まで隠れたままになります。 スクリーンショット 2026-05-23 20.58.03.png

育成就労制度とは何で、技能実習と何が違うのですか?

結論から申し上げますと、育成就労制度は「人材育成と人材確保」を正面の目的に掲げ、技能実習で問われてきた建前と実態のズレを正そうとする新しい制度です。

技能実習制度は、技能の修得を通じた国際貢献を目的としてきました。けれども出入国在留管理庁自身が、「制度目的と実態のかい離」「外国人の権利保護の観点からの課題」を認めています(出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」Q2)。そこで技能実習を発展的に解消し、人手不足分野で原則3年の就労を通じて特定技能1号の水準まで育てる制度として、育成就労制度がつくられました。施行は2027年4月1日。根拠法は令和6年法律第60号です。

技能実習との主な違いを、表に整理します。

| 区分 | 技能実習制度 | 育成就労制度 |
|---|---|---|
| 主たる目的 | 技能修得を通じた国際貢献 | 人材育成と人材確保 |
| 在留の基本期間 | 1号〜3号の区分(最長5年) | 原則3年(特定技能1号水準を目標) |
| 本人意向の転籍 | 原則認められない | 一定の要件の下で新たに認める |
| 受入れを支える機関 | 監理団体 | 監理支援機関(許可基準を厳格化) |
| 監査の独立性 | 外部役員または外部監査の選択制 | 外部監査人の設置を許可基準として明確化 |

出典:出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」(Q2・Q11・Q13・Q29・Q40、2026年5月確認)https://www.moj.go.jp/isa/applications/faq/ikusei_qa_00002.html

つまり制度は、外国人を「労働者として適切に保護する」方向へ舵を切りました。本人の意向による転籍を条件つきで認めたのも、その表れです。そして受入れを支える側、すなわち監理団体を引き継ぐ「監理支援機関」には、これまでより重い責任が課されます。


外部監査人とは誰で、なぜ弁護士・社労士・行政書士が必要とされるのですか?

答えはシンプルです。外部監査人は、監理支援機関を「外から、独立して」チェックする役割を担う人であり、その独立性を担保するために、有資格者であることと、利害関係のなさが要件とされているからです。

技能実習制度では、形式的な監査、名義貸し、実態と書類の乖離が繰り返し問題になりました。同じ轍を踏まないために、育成就労制度は監理支援機関の許可基準を厳しくしています。出入国在留管理庁は、新しい許可基準として次のような項目を挙げています(Q29)。

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| 監理支援機関の新しい許可基準(抜粋) | 内容 |
|---|---|
| 外部監査人の設置 | 外部から独立して監査する人を置くこと |
| 財務の健全性 | 債務超過がないこと |
| 監理支援先の数 | 監理支援を行う受入れ機関が原則2者以上 |
| 体制 | 監理支援実務に従事する常勤の役職員が2人以上 など |

その中心が外部監査人です。要件は3つ、と整理できます。第一に、養成講習を受講していること。第二に、弁護士・社会保険労務士・行政書士の有資格者、その他育成就労の知見を有する者であること。第三に、監理支援機関が監理支援を行う育成就労実施者と「密接な関係」を有さないこと(Q30)。

なぜ士業の有資格者が名指しされているのでしょうか。監査とは、労働関係法令や在留制度のルールに照らして、現場が正しく回っているかを判断する仕事だからです。労務は社会保険労務士、許認可と在留手続は行政書士、紛争性のある論点は弁護士。それぞれの専門性が、形だけにならない監査を支えます。資格を持っているだけで実際には動かない監査人を置くような機関は、これからは立ち行かなくなる——制度はそう宣言したのだと、私は受け止めています。

ここで一点、誤解のないようにお伝えします。本記事は外部監査人制度の一般的な情報提供です。誰が外部監査人になれるか、ある機関の体制が許可基準を満たすか、といった個別の適格性の判定は、本記事の役割ではありません。個別の案件は、必ず所管機関の最新情報と専門家にご確認ください。

外部監査人の主な業務内容は何ですか?

外部監査人の仕事は、現場を「外から、定期的に」確認し、その結果を記録に残すことが中心です。主な業務内容は、次のとおりです。

  • 3か月に1回以上の定期確認
  • 帳簿・書類・設備の確認
  • 監理支援責任者等からの聴取
  • 年1回以上の同行確認
  • 外部監査報告書の作成・提出
公的資料の様式にも、3か月に1回以上の確認や、申請者が行う監査への年1回以上の同行確認が示されています。形式的な確認にとどめず、実態を見て記録に残すこと——それが、制度の信頼を支える土台になります。

制度の狭間に落ちるのは、いったい誰ですか?

先に立ち位置を置かせてください。外部監査人は制度の「部品」ではなく、二人の人を不幸から遠ざける現場の仕組みです。二人とは、制度の狭間に落ちる外国人と、知らないうちに法令から外れてしまう経営者です。

冒頭のご相談を思い出してください。最初のズレが更新時まで表面化しなかったのは、途中で実態を見る人がいなかったからでした。外から定期的に現場を見る人がいれば、ズレは早く見つかります。早く見つかれば、配置を変える、計画を見直す、必要なら転籍を検討する——まだ打てる手が残っています。遅れれば遅れるほど、選べる道は減っていきます。

外国人にとっては、生活と将来がかかっています。経営者にとっては、誠実に採用したはずなのに、ある日「許可基準を満たしていない」と言われる事態を避けられます。外部監査人という独立した目は、どちらか一方の味方ではありません。二人のあいだに立って、現場が制度から外れる前に気づく仕組みです。

きれいごとを言うつもりはありません。外部監査人を置けば全部が解決するわけではありません。監査の質をどう保つのか、なり手をどう育てるのか、報酬と独立性をどう両立させるのか。制度が動き出してから問われる課題は、まだたくさん残っています。それでも「外から、独立して、定期的に見る」という発想が制度に組み込まれた意味は、現場を預かる立場として大きいと感じています。


育成就労時代に、士業はどう連携すればよいのですか?

順番が大切です。事実から入り、構造を見極め、最後に対策を置く。外部監査人制度は、まさに士業の連携が現場で形になる場です。

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| 分野 | 育成就労・外部監査の現場での主な役割 |
|---|---|
| 行政書士 | 在留資格・育成就労計画・各種申請の適正性を確認し、手続面の整合をとる |
| 社会保険労務士 | 労働条件・社会保険・賃金などの労務面が法令に沿っているかを見る |
| 弁護士 | 紛争性のある論点や、法律判断を担う |
| 宅地建物取引士 | 外国人材の住まいの確保など、生活基盤に関わる不動産実務を支える |

一人の専門家がすべてを抱える必要はありません。むしろ、抱え込まないことが独立性につながります。それぞれの資格者が自分の領域に責任を持ち、互いにリンクして現場を支える。士業ドットコムSAMURAIが目指しているのは、その連携を回しやすくする土台です。外部監査人制度は、その連携が「あれば便利」ではなく「制度上、必要」とされた、最初の大きな場面だと考えています。


❓ 専門家向けFAQ

Q. 育成就労制度はいつから始まりますか?
A. 施行日は2027年(令和9年)4月1日です。根拠は入管法等一部改正法(令和6年法律第60号)で、施行期日は2025年9月26日に閣議決定、関係省令は同年9月30日に公布されました。なお、監理支援機関の許可は2026年4月15日から、育成就労計画の認定は2026年9月1日から、施行日前の申請受付が予定されています(出入国在留管理庁)。

Q. 外部監査人になれるのは、どのような人ですか?
A. 出入国在留管理庁は、養成講習を受講していること、弁護士・社会保険労務士・行政書士の有資格者その他育成就労の知見を有する者であること、監理支援機関が監理支援を行う育成就労実施者と密接な関係を有さないこと、を要件として挙げています。個別の適格性は所管機関の最新情報をご確認ください。

Q. 技能実習生は、施行後どうなりますか?
A. 出入国在留管理庁によれば、2027年4月1日時点で在留している技能実習生などは、一定の経過措置の下で引き続き技能実習を続けられる場合があります。要件や期限は細かく定められているため、個別案件は専門家への確認をおすすめします。

Q. 外部監査人と外部役員の違いは何ですか?
A. 技能実習制度では「外部役員」または「外部監査」の選択制でしたが、育成就労制度では監理支援機関の許可基準として「外部監査人」の設置が明確に位置づけられました。外部役員が機関の内部から関与するのに対し、外部監査人は機関の外から独立して確認する点が要点です。詳細な定義は出入国在留管理庁の最新情報をご確認ください。

Q. 行政書士は外部監査人になれますか?
A. 出入国在留管理庁は、外部監査人の要件として「弁護士・社会保険労務士・行政書士の有資格者その他育成就労の知見を有する者」を挙げており、行政書士は想定される有資格者の一つです。ただし、養成講習の受講や、監理支援先と密接な関係を有さないことなどの要件を満たす必要があります。個別の適格性は所管機関の最新情報と専門家にご確認ください。

Q. 社労士・弁護士との役割分担は何ですか?
A. 労務・社会保険・賃金は社会保険労務士、在留手続や許認可は行政書士、紛争性のある論点や法律判断は弁護士が担う、という分担が考えられます。一人がすべてを抱え込まず、それぞれの専門性が連携することで、形だけにならない監査につながります。

Q. 養成講習はいつまでに受ける必要がありますか?
A. 外部監査人の要件として養成講習の受講が求められますが、受講期限などの細目は主務省令・運用要領等で順次定められます。本記事執筆時点では確定的な期限を断定できないため、出入国在留管理庁の最新情報をご確認ください。確保する側としては、施行前の準備期間に余裕をもって受講を済ませておくことが現実的です。

Q. 監理支援機関はいつから準備すべきですか?
A. 施行は2027年4月1日ですが、施行日前の申請受付が予定されています。出入国在留管理庁によれば、監理支援機関の許可申請は2026年4月15日から、育成就労計画の認定申請は2026年9月1日からの受付が予定されています。許可基準の一つである外部監査人の確保には時間がかかるため、早めの確認が安心です。

Q. 登録支援機関と監理支援機関は何が違いますか?
A. 登録支援機関は特定技能制度で外国人を支援する機関、監理支援機関は育成就労制度で受入れを支える機関(技能実習の監理団体を引き継ぐ位置づけ)です。育成就労では監理支援機関の許可基準が厳格化され、外部監査人の設置などが新たに求められます。根拠となる制度が異なるため、混同しないようご注意ください。


📝 参考データ・出典

※本記事の制度情報は2026年5月時点のものです。育成就労制度は主務省令・分野別運用方針・運用要領が順次公表されており、個別の手続や適格性については、必ず出入国在留管理庁の最新情報および行政書士・社会保険労務士・弁護士等の専門家にご確認ください。
著者プロフィール
浦松丈二・四葉不動産代表取締役

執筆者

浦松 丈二(うらまつ じょうじ)

四葉不動産株式会社 代表取締役/四葉行政書士事務所 行政書士・社会保険労務士(合格)・宅地建物取引士

毎日新聞社で30年以上にわたり記者として活動。中国総局長、デジタル報道センター副部長を歴任。2025年秋に独立し、文京区小日向で四葉不動産株式会社を設立。不動産と士業の融合をテーマに、AI時代の士業プラットフォーム「士業ドットコムSAMURAI」を企画・運営。東京都行政書士会文京支部会員

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【運営】
士業ドットコムSAMURAI(samurai.co.jp)は、四葉不動産株式会社が運営する士業プラットフォームです。相続・信託・不動産・在留資格などに精通した国家資格者が協力して、AI時代の士業の新しい在り方を共に作っています。開発技術パートナー:株式会社ゼットリンカー。

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